取材日:2024/02/02

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高須賀 大輔さん

研究分野:
気象・気候学
所属:
東北大学 大学院理学研究科 地球物理学専攻
趣味:
音楽(バンド活動も)

雲や水蒸気が関わる気象・気候の変動について研究しています。

 

仕事内容、この仕事・研究を志した理由

なぜだかよくわからないのですが、幼い頃から気象にとても興味があったというところに遡ると思います。あえて理由をつけるとすれば、もともと気候が穏やかな瀬戸内地方の出身なので、そんな日常と違うダイナミックな天気の変化(夕立や台風など)が子供心に不思議に思えて、窓にかじりついて外をずっと眺めていたところから芽が育ったという感じでしょうか。
 
そんな背景もあり、中学校の生活を楽しむかたわらで何か学校の勉強以外の挑戦を、と思い、気象予報士資格の取得を目指しました。中学3年生の時に無事合格し、流れで大人の気象予報士ばかりの会に参加するようになったのですが、日々の天気の変化の理由をあれこれ考察して議論するアットホームな場に恵まれ、私も四国地方で発生した集中豪雨(今ではすっかり有名になった線状降水帯によるもの)のメカニズムを調べ始めました。当時、幸運なことに、その場にいらっしゃった気象台職員の方がとても親切に議論につきあってくださり、そこで踏み出した「研究活動の第一歩」の楽しさが印象的でした。もともと数学や物理が好きだったことも相まって、それらの視点が欠かせない気象の研究をより深く進めてみたいと思い、現在の研究に至っています。
 

現在の研究について

現在は、雲・水蒸気・大気の運動が複雑に絡み合って生起している、熱帯の気象システムを調べる研究(熱帯気象学)を中心に進めています。熱帯と聞くと、我々の住む中緯度の天気とは無関係に思えるかもしれませんが、全くそんなことはありません。台風の源は熱帯にありますし、世界中に異常な天候をもたらす要因となるエルニーニョ・ラニーニャ現象の引き金は、熱帯の気象の変化が引くこともあります。また、雲の一つ一つは小さなスケールですが、時に数千kmスケールまで大きく組織化するような現象も熱帯では見られ、それが要因で日本の天候が揺さぶられていることも珍しくありません。
 
もともとの私の興味は積乱雲のような激しい気象にありましたが、実はそれが一つのミクロな構成要素としてマクロな構造を形作り、ひいては地球全体に影響を与えうるという広いスケールの繋がり(まるで生き物の構造と同じ)がなんとも難しく、その面白さにすっかり惹きつけられています。この繋がりを紐解く上で、雲や雨をなるべく正確に大気の運動と結び付けて把握することは強力なアプローチなのですが、雲のスケールの小ささから想像されるように、地球全体をものすごく細かく区切ってシミュレーションをする必要があります。そこでスーパーコンピュータを活用して、時にはリアルな地球を、時には仮説を検証するために仮想実験台としての地球を計算し、その出力を使って熱帯の雲・降水システムがどのように発生・発達するのかを理解を進めています。
 

プログラミングについて

プログラミングを始めたのは、大学の授業を受講したことがきっかけです。
教養課程にあたる大学1年次の選択科目で、コンピュータを使って天体の運動を自分で計算してみる演習形式の授業でした。1回1回の演習は終わるまで帰れず、レポートも毎週課されて大変でしたが、無心で取り組めてとても楽しかったのを覚えています。
 
今の気象の研究でもそうですし、地球の物理を扱う分野では計算を使うことが多いため、専門課程に振り分けられた後は、大学の授業でもプログラミングを学ぶ機会が多かったと感じます。学校の授業以外では、自分の研究を進める上で必要になったシミュレーション・データ解析を通じて研鑽していきました。大学1年次の演習ではPythonでしたが、今はFortranを中心に使用しています(気象・気候の大規模シミュレーションではいまだ台頭しているプログラミング言語です)。
 

 

中高生へのメッセージ

自分のやりたいことを見つけて臆せず挑戦してみて欲しいです。
 
もし、何か興味があることがあれば、是非向き合って挑戦してみてください。
中高生の間は学校の授業で勉強の課題が与えられますが、研究者はもちろん、社会では解決するに値する課題を自分で見つけて取り組むということも必要になってきます。
自分で興味があることに向き合ってみると、向き合う中でのひょんな出会いや自分の得意に気付く経験から、将来やりたいことが見えてくるかもしれません。
応援しています!

 

関連サイト

Daisuke Takasuka (google.com)