CONTENTS

2020年度~2022年度
「富岳」成果創出加速プログラム

「富岳」成果創出加速プログラムの研究課題は、「富岳」を用いた最先端の科学的成果創出や成果の社会実装を強力に推進することを目的として、文部科学省からの公募を通して選ばれています。世界最高水準のスーパーコンピュータ「富岳」のポテンシャルを最大限に活用し、国家的に取り組むべき感染症対策や防災・減災、デジタル・トランスフォーメーション(DX)やSociety 5.0の実現等、世界を先導する研究成果を生み出すことが期待されています。


各研究課題の概要及び紹介

領域1
人類の普遍的課題への挑戦と未来開拓

全原子・粗視化分子動力学による細胞内分子動態の解明

「富岳」を用いた分子動力学シミュレーションを行い、細胞内環境における蛋白質や核酸などの生体高分子の機能を解明する。全原子と粗視化モデルを用いた超並列計算を行い、大規模な生体分子系の長時間にわたる動態を調べる。粗視化モデルのパラメタを機械学習などのデータ科学の手法で最適化し、信頼性の高いシミュレーションを行うとともに、計測実験と比較し、生命科学の新しい知見を得る。

杉田 有治
杉田 有治

理化学研究所

大規模データ解析と人工知能技術によるがんの起源と多様性の解明

ゲノムシーケンスデータ解析パイプラインGenomon及びネットワーク解析アプリケーションとネットワーク深層学習システムDeep Tensor等により、正常組織においてどのように遺伝子変異クローンが生じるのか、遺伝子変異ないしその組み合わせがどのように細胞の表現型を決定するのか、さらには、その多様性・複雑性のために研究が進んでいないゲノムの構造異常が発がんにどう関わるのか、について解明する。

宮野 悟
宮野 悟

東京医科歯科大学 M&Dデータ科学センター

核燃焼プラズマ閉じ込め物理の開拓

国際熱核融合実験炉ITER をはじめとした磁気核融合では、1 億度を超える⾼温ガス、すなわち超⾼温プラズマを磁場により装置内に閉じ込めて核燃焼状態を維持する必要があります。そのために、乱流をともなう核燃焼プラズマの⾮線形挙動を解明し、内部の密度や温度分布がいかにして形成・維持されるかを理解することが極めて重要です。本課題では、正確な物理モデルにもとづいた最先端の超⼤規模シミュレーションにより、核燃焼プラズマ閉じ込め物理という未踏の科学領域において、「富岳」を活⽤した成果を早期に創出することを⽬指しています。

渡邉 智彦
渡邉 智彦

名古屋大学

成果報告書はこちら

量子物質の創発と機能のための基礎科学 ―「富岳」と最先端実験の密連携による革新的強相関電子科学

物理学の根元的な問いである、量子流体の本性は何か?という問いと、高温超伝導はどうやって生み出されるのか?という2つの未解決で深く関連しあう基礎科学の根本課題に挑戦するために、機械学習など含めた計算手法と、「富岳」のための効率的なコードの開発を行ない、「富岳」を駆使した応用を展開する。

今田 正俊
今田 正俊

早稲田大学理工学術院総合研究所

シミュレーションで探る基礎科学:素粒子の基本法則から元素の生成まで

自然界の成り立ちには、宇宙の誕生とそれに関わる素粒子の基本法則から、原子核の構造、元素がどこでどうやって作られたのか、といった大きな疑問が残っています。大規模な実験・観測の結果を解釈し科学を発展させる上でシミュレーションが重要な役割を果たします。本課題は、我が国で卓越した成果が見込まれる6研究テーマ(B中間子崩壊、QCD相構造、バリコン間力、核構造とr過程、中性子星合体、時空生成)を推進します。

橋本 省二
橋本 省二

高エネルギー加速器研究機構

宇宙の構造形成と進化から惑星表層環境変動までの統一的描像の構築

宇宙の始まりであるビッグバンから、膨張宇宙における構造形成、それに伴って起こる銀河形成、銀河の中での星形成、星形成に伴う惑星形成、惑星の進化、惑星表層環境の形成、さらには太陽活動とその太陽圏、地球への影響といった、宇宙における階層的な構造の形成と進化についての全体・統一的な理解を、複数の階層にまたがって「富岳」を駆使した世界最高規模のシミュレーションと最新の観測成果を組み合わせることで構築します。

牧野 淳一郎
牧野 淳一郎

神戸大学

脳結合データ解析と機能構造推定に基づくヒトスケール全脳シミュレーション

ポスト「京」萌芽的課題の成果を受けて、引き続き「富岳」を用いてヒトスケールの神経回路シミュレーションを達成することを目指します。また、げっ歯類~小型霊長類規模の大脳皮質-基底核-視床-小脳シミュレーションを、身体モデルとの統合を含めて推進します。並行してこれまで開発を続けてきた高性能神経回路シミュレータとAIフレームワークを移植し、「富岳」向けのチューニングを行います。

山﨑 匡
山﨑 匡

電気通信大学

領域2
国民の生命・財産を守る取組の強化

プレシジョンメディスンを加速する創薬ビッグデータ統合システムの推進

ポスト「京」重点課題1で開発してきた「創薬ビッグデータ統合システム」を用いる事で、患者由来の遺伝子多型・変異が、タンパク質の構造やダイナミクスに与える影響を明らかにする。これによって得られる分子レベルでの病態解明・薬剤反応性・薬剤設計に関する知見を臨床現場、創薬現場に提供することで、プレシジョンメディスンの加速を目指す。

奥野 恭史
奥野 恭史

理化学研究所

マルチスケール心臓シミュレータと大規模臨床データの革新的統合による心不全パンデミックの克服

「富岳」のパワーとUT-Heartの独自技術を元に、遺伝子レベルまでのミクロへの垂直展開と臨床上見られる広範な多様性を反映した水平展開を行います。これにより世界に類を見ない大規模な「インシリコ心疾患データベース」を生成し、公開します。更にこれと東大病院の大規模臨床データを統合することにより拓かれる新たなデータサイエンスの形を示すと共に、現在120万人にも上る心不全患者の早期発見や治療に貢献します。

久田 俊明
久田 俊明

株式会社UT-Heart研究所

大規模数値シミュレーションによる地震発生から地震動・地盤増幅評価までの統合的予測システムの構築とその社会実装

本課題では、大規模有限要素を用いた計算コードが、国の被害想定のもとになる長周期地震動計算や津波初期水位計算で用いられるようアプリケーションの改良を国と連携して実施すると共に、企業が国の想定と同等の計算ができる仕組みを構築する。また、「富岳」の性能を引き出すように、計算科学・計算機科学の最先端技術を駆使して、地震に関する災害被害予測のための大規模アプリケーションを改良する。

堀 高峰
堀 高峰

海洋研究開発機構

防災・減災に資する新時代の大アンサンブル気象・大気環境予測

近年激甚化する極端気象現象からの防災・減災を実現するために、数日から数週間~季節スケールの大規模アンサンブルの気象・大気環境予測実験を富岳を用いて実施し、リードタイムをもった確率予測情報の提供が可能な新時代の数値予測技術を確立する。集中豪雨や台風に対して、観測ビッグデータを利用した高解像度の大規模アンサンブル実験を実施し、確率予測情報を付加した高精度な数値天気予報を可能とする。

佐藤 正樹
佐藤 正樹

東京大学大気海洋研究所

領域3
産業競争力の強化

次世代二次電池・燃料電池開発によるET革命に向けた計算・データ材料科学研究

本課題(富岳電池課題)は、将来のET(エネルギー・環境技術)革命において中心的役割を果たす二次電池および燃料電池の次世代技術の開発や実用化に向けて、重要課題の微視的機構解明およびそれをもとにした材料探索・反応制御の指針提案を、「富岳」を用いた先端的計算・データ材料科学研究により推進し、熾烈な国際競争の中での我が国の産業競争力強化、カーボンニュートラル・脱炭素社会実現に貢献する。

館山 佳尚
館山 佳尚

物質・材料研究機構

スーパーシミュレーションとAIを連携活用した実機クリーンエネルギーシステムのデジタルツインの構築と活用

「富岳」での活用を念頭に開発準備を進めてきたアプリケーション群に基づくマルチフィジクス・マルチスケール統合シミュレーションとAIを連携活用し、Society5.0を支える電力システムの主要クリーンエネルギーシステムとなるCCS技術の適用に適した次世代火力発電システム、及び洋上ウィンドファームのデジタルツインを構築し、実機エネルギーシステムの開発、設計、運用の最適化に活用できるようにする。

吉村 忍
吉村 忍

東京大学大学院工学系研究科

省エネルギー次世代半導体デバイス開発のための量子論マルチシミュレーション

計算物質科学とコンピュータ科学との融合(コンピューティクス)による、大規模量子論第一原理計算により、アモルファスゲート絶縁膜/半導体に代表されるデバイス界面の特性を解明し、さらに第一原理計算と半導体デバイスシミュレータおよびエピタキシャル成長プロセスシミュレータとを統合した新たなシミュレーション技術を確立し、次世代省エネルギー半導体デバイスにおける科学と製造技術の発展に寄与します。

押山  淳
押山 淳

名古屋大学

大規模計算とデータ駆動手法による高性能永久磁石の開発

高性能磁石は、電動車の駆動モータや風力発電機などに用いられ、今後、使用量の増加と用途の多様化が見込まれている。本課題では、磁石粒界の大規模第一原理計算、磁化反転シミュレーションとマテリアルズ・インフォマティクス手法を組み合わせて、高性能磁石の特性と構造・組成の関連を特定し、利用環境に応じた最適な特性を持つ磁石の設計技術を確立する。

三宅 隆
三宅 隆

産業技術総合研究所

環境適合型機能性化学品

付加価値額が全産業の約1割を占める化学産業において中核を担うポリマー材料の環境適合化を目指す。環境改善に資する分離膜の高度化、機能性材料における環境リスク成分の使用削減、および、バイオ由来樹脂の機能強化のために、全原子MDシミュレーションと自由エネルギー計算を行い有用なポリマー構造を探索する。また、樹脂/金属界面のQM/MM計算によって、異種材料からなる接着界面の劣化機構を分子レベルで解析する。

松林 伸幸
松林 伸幸

大阪大学

「富岳」を利用した革新的流体性能予測技術の研究開発

エネルギー産業の心臓部となる「ターボ機械」と輸送産業の中核となる「自動車」を対象とした、5つの実証研究テーマに対して、ポスト「京」重点課題⑧で開発した、「富岳」あるいは「富岳」の時代におけるHPCの高い計算性能を十二分に引き出すことができるアプリケーション・ソフトウェアを駆使することによって、ものづくりの在り方を抜本的に変革できることを証明することを目的とした研究開発を実施しています。

加藤 千幸
加藤 千幸

東京大学生産技術研究所

航空機フライト試験を代替する近未来型設計技術の先導的実証研究

本課題では,世界初となる航空機全機複雑形状・実飛行レイノルズ数での圧縮性LES解析による空力予測評価を独自の学術成果と「富岳」を利用することで可能とし,本技術が現状の航空機開発における実機フライト試験への依存度を激減させる,次世代の設計開発技術となることを先導的に実証していく.また超大規模複雑流体データを解析するためのデータ科学的アプローチ,および構造設計上重要となる空力・構造連成多設計変数・多目的最適化課題にも取り組む.

河合 宗司
河合 宗司

東北大学

データ駆動型高分子材料研究を変革するデータ基盤創出

全原子分子動力学シミュレーションに基づく高分子物性自動計算システムRadonPyを用いて、世界最大の高分子物性オープンデータベースを構築する。膨大な計算量の壁を乗り越えるため、多数の企業・大学・国研からなる連合体を形成し、データベースを共同で開発する。超並列計算機におけるRadonPyシステムの拡張・高度化を図ると共に、「富岳」の計算資源を活用して10万種類以上の高分子骨格を包含する前人未踏の高分子物性データベースを創出する。

吉田 亮
吉田 亮

情報・システム研究機構 統計数理研究所

「富岳」が拓くSociety 5.0時代のスマートデザイン

坪倉 誠

理化学研究所

「富岳」を活用した革新的光エネルギー変換材料の実現

「富岳」を活用したハイパフォーマンス材料シミュレーション・インフォマティクスを中核として、世界を牽引する実験グループ・企業組合と連携した革新的な光エネルギー変換材料の社会実装を行う。創出されるデータに基づき、光触媒による水素製造・ウィルス不活性化による感染症対策・高効率な太陽電池の産業レベルでの実現を目指す。

中嶋 隆人
中嶋 隆人

理化学研究所

領域4 研究基盤

全脳血液循環シミュレーションデータ科学に基づく個別化医療支援技術の開発

 
和田 成生

大阪大学





back