Vol.19

天の川銀河をシミュレーションと
AIの融合で高速かつ細部まで再現

東京大学大学院理学系研究科天文学専攻
准教授

藤井ふじい 通子みちこ さん

研究者紹介

宇宙の進化の過程をシミュレーションにより細部まで再現するには、進化の過程で起きるさまざまな現象を計算に盛り込まなければなりません。すると、計算量は現実的な時間では計算しきれないほど膨大になってしまうため、数値計算のさらなる高速化が不可欠です。しかし、細部まで再現するのと計算速度とはトレードオフ(二律背反)の関係にあり、従来の数値計算手法には限界があります。そこで、宇宙の138億年の進化の歴史の中でも、特に地球を含む天の川銀河にターゲットを絞り、シミュレーションとAIの融合という挑戦的な数値計算手法で、天の川銀河の形成過程をより細部まで、しかも高速にシミュレーションしようとしているのが、東京大学の藤井さんの研究グループです。

大規模計算の課題とは The Challenges of Large-Scale Computation

「富岳」などのスーパーコンピュータによるシミュレーションでは、搭載するCPUやノードの数を増やすことで、大規模計算を実現してきました。多くのCPUを使って並列分散処理をした方が、CPU1個当たりの計算量が減り、計算速度が上がるからです。

ところが、それに伴い、CPU間やノード間でのデータの送受信も増えることから、送受信がボトルネックとなり、ある時点から、CPU数をいくら増やしても計算速度が上がらなくなってしまいます。このことが、大規模計算における課題とされています。

CPUやノードの数を増やすだけでは宇宙の進化の過程を細部まで現実的な計算時間では再現できないと考えた藤井さんの研究グループは、シミュレーションの一部をAIに置き換えて、計算量を劇的に減少させる研究に取り組んでいます。

狭い領域で短時間に起こる現象をAIで予測 Using AI to Predict Phenomena Occurring in Small Regions Over Short Time Periods

藤井さんが研究の対象としている銀河は、回転する円盤状の構造をしています図1。銀河は多数の星々、水素やヘリウムを主な成分とする星間ガス、ダスト(塵)、ダークマターなどによって構成されています。そして、星々の重力や星間ガスの流動に伴う新たな星の誕生、質量の大きな星が一生を終える際に起こす超新星爆発などによって常に進化を続けています。

「現在、私の研究グループでは、地球のある天の川銀河がどのような過程を経て、今のような姿になったのか、銀河のまるで生き物のような運動や超新星爆発の出すエネルギーが、銀河の中での星の誕生とどう関わっているのかを、シミュレーションによって解き明かす取り組みを進めています。それにより、地球が誕生する様子なども再現できるようになれば、新たな発見があるのではないかと期待しています」(藤井さん)。

しかし、天の川銀河には、星だけで約1011個もあります。星以外にもダークマターや星と同じくらいの質量の星間ガスもあります。天の川銀河の進化の過程をシミュレーションによって細部まで再現するには、これらすべての構成要素を、シミュレーションの中に取り入れる必要があります。

図1宇宙望遠鏡「ガイア」のデータに基づいて描かれた天の川銀河の想像図

© ESA/Gaia/DPAC, Stefan Payne-Wardenaar

また、天の川銀河の進化の過程を再現するには大きな空間を長時間にわたってシミュレーションする必要があります。しかし、狭い空間で短時間に起こるイベントが進化の過程に大きな影響をもたらす場合もあります。天の川銀河では、空間的にも時間的にもスケールの異なるさまざまな現象が起こっているのです。より細部までシミュレーションしようと狭い領域で短時間に起こる現象に合わせて時間の刻み方、空間の区切り方を細かく設定すると、天の川銀河全体の計算時間は膨大になってしまいます。

「通常、狭い領域で短時間に起きる現象については、その部分の粒子だけに短い時間刻みを与えて、計算量を減らす工夫をします。しかし、この方法でも全体の計算時間を大幅に短縮することは困難なのです」(藤井さん)。

そこで、藤井さんの研究グループが考えたのが、多くの計算時間を要する狭い領域で短時間に起きる現象を、シミュレーションではなく、AIモデルを使って予測させるということでした。そして、そのターゲットに選んだのが、超新星爆発という現象です。

銀河全体に大きな影響を与える超新星爆発 Supernova Explosions Have a Major Impact on the Entire Galaxy

超新星爆発とは、太陽の約8倍以上の質量を持つ重い星がその寿命の最後に起こす爆発現象のことです。天の川銀河全体からみれば、極めて狭い領域で、非常に短時間のうちに終わってしまう現象ですが、天の川銀河の進化に与える影響が大きいのが特徴です。

なぜなら、超新星爆発により、周囲の星間ガスが円盤状の天の川銀河の縦方向に噴きあげられ、それと同時に、超新星爆発の熱エネルギーによって星間ガスが圧縮され、それにより、新たな星が形成されると考えられているからです。星の材料には、炭素や酸素、鉄など、質量の大きな元素も含まれています。それらの元素も、星の内部で水素やヘリウムから始まる核融合反応によって生成され、超新星爆発によって周囲に巻き散らされているのです。

平島敬也さん

理化学研究所 数理創造研究センター基礎科学特別研究員
2024年度「富岳」成果創出加速プログラム次世代研究者賞を受賞

「超新星爆発は、銀河の進化を駆動するエンジンのようなものと考えるとイメージしやすいでしょう」。こう説明するのは、現在、理化学研究所数理創造研究センターの基礎科学特別研究員である平島敬也さんです。平島さんは、2025年3月まで藤井さんの研究室に所属し、藤井さんとともに天の川銀河のシミュレーションのプログラムを開発してきました。

しかし、超新星爆発の様子を細部まで再現するには、時間も空間も非常に細かく区切って計算する必要があり、それに伴い、計算時間も計算コストも膨大になってしまいます。中でも最も計算に時間を要するのが、超新星爆発後に星間ガスが周囲に広がっていく様子の再現でした。

そこで、藤井さんと平島さんは、AIの活用を試みました。まず、超新星爆発だけのシミュレーションを行い、その結果を教師データとして深層学習によってAIに学習させます。すると、AIによる超新星爆発部分の予測が可能になります。その予測結果を、銀河のシミュレーションに戻せば、超新星爆発を細部までシミュレーションしても、要する計算時間を大幅に短縮できるはずと考えたのです図2

図2超新星爆発領域のAIによる予測を取り入れる天の川銀河のシミュレーションの模式図

藤井さんらの構想を示した模式図。時間が上から下に経過している。左は銀河全体のシミュレーション。その一部、赤四角で囲った超新星爆発領域の105年分を取り出して、分解能を上げてシミュレーションするのではなく、右に示したAIによる予測で置き換える。
左のシミュレーション画像:斎藤貴之(神戸大)、可視化:武田隆顕(ヴェイサエンターテイメント株式会社) より許可を得て改変。

まずAIモデルをつくる First, Creating the AI Model

天の川銀河のシミュレーションにおいては、質量をもつものはすべて粒子として表現し、星間ガスは粒子同士を重ね合わせた流体として扱います。その上で、流体の密度、温度、速度などに関する方程式を解くと、超新星爆発により急激に膨張した星間ガスからバブルやシェルのような構造ができてくる様子が計算結果として現れます。

超新星爆発は、天の川銀河全体の至るところで頻繁に多数発生していますが、星間ガスの密度分布や温度分布によって現象のパターンが異なります。そのため、シミュレーションでは、超新星爆発が広がりそうな範囲について、3次元の星間ガスの密度分布、温度分布、速度分布の3つのパラメータの値をさまざまに変えて、複数のパターンのシミュレーションデータを作ります。そして、このシミュレーションデータを教師データとして、深層学習によりAIに学習させて、AIモデルを作るのです。そのため、AIモデルは、入力された3つのパラメータの値をもとに、超新星爆発による星間ガスの広がりを予測できるのです。

そこで、深層学習のために、超新星爆発における星間ガスの動きをシミュレーションした3次元のデータを、多数、生成しました。最初に、密度に濃淡のある星間ガスの密度分布を作ります。次に、超新星爆発が発生した際に、星間ガスの中に超新星爆発の熱エネルギーを注入します。すると、加熱された星間ガスが一気に膨張し、星間ガス内のバブルやシェルのような構造をシミュレーションすることができます。このシミュレーションデータを学習したAIモデルは、密度・温度・速度から超新星爆発による星間ガスの広がりを予測できるのです。

シミュレーションとAIモデルを融合 Integrating the Simulation and AI Model

次に、構築したAIモデルをシミュレーションに融合させる方法です。
まず、天の川銀河のシミュレーションを実行します。そして、シミュレーションの途中で超新星爆発が発生した際には、その都度、AIモデルを呼び出します。 その際、AIモデルには、そのときの3次元の星間ガスの密度分布、温度分布、速度分布の値を送信します。 AIモデルは、送信された3つのパラメータの値をもとに、超新星爆発による星間ガスの広がりを予測し、予測結果を、3つのパラメータの値として天の川銀河のシミュレーションに戻します。 そのため、AIモデルの予測結果は、天の川銀河のシミュレーションから送信された入力データに応じて変わります。AIモデルから予測結果を受け取った天の川銀河のシミュレーションは、その値をもとに、さらにシミュレーションを続けます図3

図3超新星爆発のシミュレーションにおけるAIモデルの可能性

シミュレーションした場合(高分解能・低分解能)と、機械学習によって作成したAIモデルの場合の違いを密度分布、温度分布、速度分布で比較。下3段を比較すると、密度分布、温度分布、速度分布ともに、低分解能のシミュレーションよりもAIモデルの方が高分解能のシミュレーションに近いことがわかる。

本データを得るために使用したコンピュータ
  • AIモデルに学習させるための教師データを作成するシミュレーション:
    国立天文台の天文学専用のスーパーコンピュータ「アテルイⅡ」またはスーパーコンピュータ「富岳」
  • 深層学習:
    東京大学のGPUスーパーコンピュータ「Wisteria/BDEC-01 Aquarius」
  • AIモデルの推論の最適化:
    スーパーコンピュータ「富岳」

天文学の分野では初の試み A First Attempt in the Field of Astronomy

平島さんは、AIモデルの構築をするために、教師データとして3次元の異なる星間ガスの密度分布と温度分布、速度分布をもつシミュレーションデータを「アテルイⅡ」や「富岳」を使って約300通り作りました。「AIモデルを活用することで、従来手法に比べて、約100倍も高速になることがわかりました」と平島さんは胸を張ります動画

藤井さんは「シミュレーションデータを深層学習の教師データに使うというケースは増えてきていますし、複雑なシミュレーションを機械学習や深層学習で代替する『サロゲートモデル』も出てきています。しかし、我々のように、シミュレーションとAIモデルをリアルタイムで融合するという取り組みを行っているところはほとんどなく、特に天文学の分野においては、世界初の試みでした」とその新規性を説明します。

動画AIを用いた超新星爆発のシミュレーション(天の川銀河の100分の1の規模)

(左)シミュレーションのみで超新星爆発を再現 (右)超新星爆発の部分をAIモデルで予測
Myrは100万年。pcは長さの単位で約3.26光年。ドットの色は温度を表す(0Kは-273.15℃)。 AIモデルでは少し遅れてある時刻に突然、超新星爆発により星間ガスが広がった領域が現れる。しかし、両者で銀河全体への影響はほとんど差がない。 具体的には、星間ガスの広がり、銀河の回転の様子、1年間に星ができる個数、縦方向(映像の垂直方向)に星間ガスが噴き上がるアウトフローと呼ばれる現象における星間ガスの量、これらが一致している。 (右)の手法では(左)より約100倍の計算時間の高速化ができた。このシミュレーションは3次元で行ったが、この動画では2次元の結果を示している。

本データを得るために使用したコンピュータ
  • AIモデルに学習させるための教師データを作成するシミュレーション:
    国立天文台の天文学専用のスーパーコンピュータ「アテルイⅡ」またはスーパーコンピュータ「富岳」
  • 深層学習:
    東京大学のGPUスーパーコンピュータ「Wisteria/BDEC-01 Aquarius」
  • 銀河のシミュレーション:
    米国 Flatiron Instituteのコンピューティング・クラスタ「Popeye」またはスーパーコンピュータ「富岳」

「富岳」を使い、天の川銀河の10分の1の規模のシミュレーションを実施 Simulation of One-Tenth Scale of the Milky Way Galaxy Using Fugaku

さらに、藤井さんと平島さんは、「富岳」を使い、天の川銀河全体の10分の1の規模のシミュレーションを、1010個の粒子を使って実施しました図4

図4天の川銀河全体の10分の1の規模のシミュレーション ※1※1 
研究課題名:AIを用いた高解像度銀河形成シミュレーションの開発(hp250186)
課題代表者:理化学研究所 平島 敬也

(左)ある時刻の密度分布(右)左と同時刻の温度分布

本データを得るために使用したコンピュータ
  • AIモデルに学習させるための教師データを作成するシミュレーション:
    国立天文台の天文学専用のスーパーコンピュータ「アテルイⅡ」またはスーパーコンピュータ「富岳」
  • 深層学習:
    東京大学のGPUスーパーコンピュータ「Wisteria/BDEC-01 Aquarius」
  • 銀河のシミュレーション:
    スーパーコンピュータ「富岳」

2つの図は同時刻のスナップショットで、左が密度分布、右が温度分布を表現しています。左の図の青い四角で囲んでいるところを見ると、分解能を10倍にしたことの効果がわかります。黒い部分は何もない領域で、緑色や黄色の部分は粒子が多く集まっている星間ガスの領域です。多くのシェルができており、その真ん中で、超新星爆発が起こっているのがわかります。超新星爆発が発生した場所では星間ガスが噴き上げられ、シェルが広がっている様子が確認できます。

「今回、細かい構造が見えるようになったことで、密度の高い領域が多く現れることがわかりました。これにより、これまで1年間にできると考えられていた星の数が見直され、今後、増える可能性が出てきました。一方で、できる星の数が、これまでの予想よりも多いとなれば、その分、超新星爆発の頻度も増えるので、1年間にできる星の数はむしろ減るかもしれません。その点に関しても、今後、研究していく計画です」(藤井さん)。

天の川銀河全体を星1個分の分解能で再現できるのは「富岳」しかない Only Fugaku can Reproduce the Entire Milky Way Galaxy at the Resolution of a Single Star

今回の世界初の挑戦が成功した要因について、藤井さんは、「AIモデルに置き換える部分の選定が的確だった」と分析します。「特に数値計算が大変である上、天の川銀河の形成過程において重要な現象である超新星爆発にターゲットを絞ったことが良かったと考えています。超新星爆発の次は、星の形成過程をAIモデルに置き換えたいと考えていますが、超新星爆発に比べてAIモデルに置き換える時間が長く、より遠くの未来をAIに予測させます。そのため、さらにむずかしい課題となります」(藤井さん)。

また、大規模計算に、「富岳」を使うことのメリットは、やはりノード数、CPU数が多いことと藤井さんは語ります。「天の川銀河全体を星1個分の分解能でシミュレーションできるスーパーコンピュータは、「富岳」しかありません。計算に必要なメモリを有するスーパーコンピュータは他にもあるのですが、ノード数もCPU数も足りないため、計算時間が、「富岳」の10倍はかかってしまうのです。たとえば、「富岳」を使えば、数値計算に1年かかるシミュレーションが、他のスーパーコンピュータを使うと10年もかかる計算です。これは現実的ではありませんよね」。

藤井さんの研究グループは、「富岳」の全系規模実行で、これまでで最大規模のシミュレーションの10倍の規模である天の川銀河全体のシミュレーションも進めています。

「それにより、超新星爆発が天の川銀河全体にどのような影響を及ぼすのか、超新星爆発によって、新たな星がどのようにして生まれるのかなどを、さらに細部まで再現できるのではないかと期待しています」(藤井さん)。

ラボメンバー

左から平島さん、博士課程3年の林祺紘さん、藤井さん、修士課程1年の丸塚樹さん、特任研究員の原田直人さん。(2025年6月12日撮影)

研究課題名:AIを用いた高解像度銀河形成シミュレーションの開発(hp250186)
課題代表者:理化学研究所 平島 敬也 本文

研究課題名:シミュレーションとAIの融合で解明する宇宙の構造と進化(hp230204/ hp240219)
課題代表者:筑波⼤学 大須賀 健

研究者紹介

東京大学大学院理学系研究科天文学専攻 准教授 藤井 通子 さん

「頭の中で思い描いたものをつくってみることが好き」という藤井さん。「シミュレーションには、動くものをつくるという楽しさがあります」と目を輝かせます。もともとプログラミングに興味があったわけではなく、大学生時代に、天文学の講義で、銀河のシミュレーションの実習をしたときに、その面白さに魅了されました。渦巻き銀河や天の川銀河など美しい構造の天文写真を眺めるのが好きだった藤井さんは、シミュレーションならば動きまで見られることに感動したそう。それが契機となり、学部4年生のとき、宇宙に関するシミュレーションを行っている研究室を選びました。「以来、研究が趣味という感じですね」。
一方で、家庭でも、2人の小学生の母親として創作をしています。今、夢中になっているのは子どもの頃からの趣味である手芸の腕を活かし、夜、皆が寝静まったあとなどに子どもの服を作ること。「男の子と女の子なのですが、男女のお揃いの服はほとんど売っていません。それで、自分でデザインを考え、仕立てて楽しんでいます」

取材日:2025年6月12日

COLUMN Connect

COLUMN CONNECTは、計算科学の研究者によるリレー形式のコラムです。
研究者になったきっかけ、転機となった出来事、現在の研究内容などを研究者自身に綴っていただきます。

京都大学大学院工学研究科
機械理工学専攻
助教

かく 玉婷ゆうていさん

私も研究者になりたい

私は幼少期から理科の先生だった祖父母に囲まれ、自然科学に関する話を聞くうちに科学に興味を持つようになりました。その影響もあり、高校時代には物理学や工学に惹かれるようになり、学部から修士にかけて化学工学を専攻しました。修士課程ではキャビテーション現象の研究を通じて微視的なメカニズムに興味を持つようになりましたが、周囲の同級生は就職活動に熱心で、その流れに乗って私も一度は就職しました。しかし、やはり自分の興味を追求してみたいと思い、仕事を辞めて東北大学の博士課程に進むことを決意しました。

博士課程では、新しい環境と研究分野に飛び込んだ当初は戸惑いもありましたが、研究室の先輩や先生方の温かい支えのおかげで、次第に研究に没頭することができました。分子動力学法を用いた熱輸送制御の研究に取り組む中で、数値解析が持つ「見えないものを可視化する力」に魅了されました。物理や化学の基本法則に基づくシミュレーションで、目に見えない分子の動きを計算で再現する作業は、未知の世界を覗くような感覚でした。論文を初めて発表した際に先生から「先生になりたいのか?」と声をかけていただいた一言は、研究を続ける上で大変励みになりました。博士課程修了後、燃料電池のシミュレーションに従事し、触媒層の設計に機械学習技術を取り入れることで、計算科学の新しい方向性を切り拓く可能性を感じました。現在、京都大学の助教として、固体酸化物形燃料電池における分子スケールの熱・物質輸送解析に取り組むとともに、機械学習技術を活用したシミュレーションの高度化を目指しています。

研究者としての道を歩む中で、さまざまな課題や困難に直面することもありましたが、自分の可能性を信じ、努力を続けたことで、ここまで来ることができました。研究者としての道はまだ始まったばかりですが、これからも物理化学、計算科学、データ科学を融合した新しい研究領域を切り拓き、社会に少しでも貢献できるよう努めていきたいと考えています。

次は、東北大学流体科学研究所に在籍していたときに、共に研究を行っていた東北大学大学院工学研究科楠戸宏城さんに繋ぎたいと思います。